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自治体DX推進計画とは?【第5.1版・2026年1月改定】重点8項目と「計画期間がなくなった」意味

2026 9/05
自治体AI
2026.09.05
自治体DX推進計画の本体資料を机上で確認する場面

自治体DX推進計画について調べると、「重点取組事項は6つ」「計画期間は2026年3月まで」と書かれた解説がいくつも出てきます。どちらも、今の計画の内容ではありません。

最新は第5.1版(2026年1月30日改定)。重点取組事項は8項目に増え、計画期間という考え方そのものが第5.0版でなくなりました。

この記事では、総務省が公開している第5.1版の本体と改定概要だけを材料にして、「今の計画には何が書いてあるのか」「自団体の方針をどこまで直す必要があるのか」を整理します。数字と項目名はすべて原典から引いています。

目次

結論|最新は第5.1版。ネット上の解説の多くは2〜3世代前で止まっている

先に要点だけ並べます。

  1. 最新版は第5.1版(2026年1月30日改定)。 第5.0版が2025年12月、第4.0版が2025年3月改定でした。改定のペースは速く、1年で2回変わっています。
  2. 重点取組事項は8項目。 「情報システムの標準化・共通化/マイナンバーカード/行政手続のオンライン化/AI・RPA/テレワーク/セキュリティ」の6項目で解説している記事は、第2.0版(2022年)当時の構成です。
  3. 計画期間は設定されていません。 従来は「令和7年度末まで」という期間がありましたが、第5.0版でこれを廃止し、代わりに別紙2で5年間を目途とした取組スケジュールを毎年度更新する形になりました。
  4. この計画は義務ではありません。 計画本体に「地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言である」と明記されています。つまり法的な強制力を持つ命令ではなく、国からの助言という位置づけです。

3番と4番は、庁内で説明するときに効きます。「期限が切れるから急ぐ」でも「国の命令だからやる」でもない、という前提が変わるからです。

30分・無料・オンライン可の個別相談では、「うちの団体の推進方針が今の版とどこがズレているか」を一緒に見るところから始められます。売り込みはしません。

自治体DX推進計画とは|「義務」ではなく地方自治法上の技術的助言

自治体DX推進計画は、2020年12月に総務省が策定した文書です。自治体DXの全体像から先に押さえたい方は、親記事の自治体DXとはから読んでください。

政府が毎年度閣議決定する「デジタル社会の実現に向けた重点計画」には、自治体に関係する施策がたくさん含まれています。ただし重点計画は国全体の方針なので、「自治体は具体的に何をやればいいのか」までは書かれていません。そこを具体化し、あわせて総務省や関係省庁の支援策をまとめたものが、この自治体DX推進計画です。

位置づけについて、計画本体にはこう書かれています。

本計画に記載された自治体の取組に関する内容については、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言である。

(総務省「自治体DX推進計画【第5.1版】」1.2 本計画の趣旨)

技術的助言とは、国が自治体に対して「こうするのが望ましい」と示すもので、従わなかったからといって罰則があるわけではありません。この点を押さえておかないと、庁内で「国が決めたことだからやらなければならない」という説明になり、なぜやるのかが誰にも共有されないまま作業だけが降ってくることになります。

一方で、標準化のように別の法律(地方公共団体情報システムの標準化に関する法律)で義務づけられている取組も、この計画の中に並んで書かれています。「計画に載っている=全部が同じ強さの要請」ではない、というのが実務上いちばん大事な読み方です。

第5.0版で「計画期間」がなくなった|期限が消えたのではなく、毎年更新に変わった

自治体DX推進計画の年次スケジュールを確認する職員の手元

第5.0版の改定内容に、こう書かれています。

現行の自治体DX計画は令和7年度末までの計画期間を設けていたところ、デジタル重点計画等の政府文書には計画期間が定められていないこと、今後も中長期的に継続的な取組が見込まれることから、計画期間は設定しないこととする。

(総務省「自治体DX推進計画の改定概要【第5.1版】」)

つまり、こういう変化です。

第4.0版まで第5.0版以降
計画期間令和7年度末まで設定しない
スケジュールの示し方計画期間の中で各取組の目標年次別紙2で5年間を目途のスケジュールを設定し、毎年度更新

これは実務上、けっこう大きな話です。

「2026年3月で計画期間が終わる」という前提で自団体の推進方針の期間を合わせていた場合、その根拠が消えています。逆に「期限がなくなったから緩くなった」わけでもありません。毎年度更新される別紙2のスケジュールを、毎年見に行く必要が生まれたという意味です。年に1回、別紙2だけを開いて自団体の工程表と突き合わせる、という運用に切り替えるのが素直な対応になります。

重点取組事項は6つではなく8つ|何が増えたのか

第5.1版の重点取組事項は、次の8項目です。

  1. 自治体フロントヤード改革の推進
  2. 地方公共団体情報システムの標準化
  3. 「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」に基づく共通化等の推進
  4. 公金収納におけるeL-QRの活用
  5. マイナンバーカードの取得支援・利用の推進
  6. セキュリティ対策の徹底
  7. 自治体のAIの利用推進
  8. テレワークの推進

古い解説記事で見かける6項目の構成と比べると、こう変わっています。

  • 「行政手続のオンライン化」が単独項目ではなくなり、①フロントヤード改革に統合された。 オンライン申請だけを進めるのではなく、窓口・支所・郵便局・自宅を含めた住民との接点全体を設計し直す、という枠組みに広がっています。
  • ③共通化と④eL-QRが新しく入った。 ③は第5.0版で標準化から独立した項目になりました。
  • ⑦が「AI・RPAの利用推進」から「AIの利用推進」に変わった。

このうち④eL-QRは、2026年9月以降に動き出す項目です。 計画にはこう書かれています。

2026年(令和8年)9月以降、自治体ごとにeL-QRを活用した公金収納が開始される。未導入自治体においては導入の検討を、導入済み自治体においては対象となる公金の拡大を目指す。

国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料、道路占用料などの公金を、地方税と同じQRコードの仕組み(eL-QR)で納付できるようにする、という話です。地方税ではすでに動いている仕組みを、税以外の公金に広げます。この項目に触れていない解説記事は、それだけで版が古いと判断して構いません。

8項目を一行ずつ|自団体が「何をやること」なのか

自治体DX推進計画の重点8項目を確認する職員の手元

計画の文章は行政文書なので、そのままだと現場の動きに変換しづらいところがあります。各項目が実務上は何をやることなのかを、一行ずつ置き換えます。

重点取組事項実務では何をやることか
①自治体フロントヤード改革の推進オンライン申請・書かない窓口・予約システム・リモート窓口などを組み合わせ、住民が手続きする「場所と方法」を増やす。対面でも紙ではなくデータで処理する
②地方公共団体情報システムの標準化住民記録・税・福祉など20業務の基幹システムを、国が定めた標準仕様に準拠したものへ入れ替える
③共通基盤に基づく共通化等の推進個別に作らず、国・地方で共通の基盤を使う。都道府県と市町村が連携した共同調達もここに含まれる
④公金収納におけるeL-QRの活用保険料や使用料などの納付書に、地方税と同じQRコードを載せて納付できるようにする
⑤マイナンバーカードの取得支援・利用の推進カードを持っている前提の手続き(オンライン申請の本人確認など)を増やす
⑥セキュリティ対策の徹底令和8年度から義務化された「サイバーセキュリティを確保するための方針」を策定する(令和6年改正の地方自治法に基づく)。あわせて情報セキュリティポリシーガイドラインに沿った対策を実施する
⑦自治体のAIの利用推進音声認識・文字認識・チャットボット・生成AIなどを業務に組み込む
⑧テレワークの推進職員が庁舎の外で働ける環境を整える

フロントヤード改革については、計画がデジタル手続法の3原則を引いています。①デジタルファースト(一貫してデジタルで完結する)、②ワンスオンリー(一度出した情報は二度出させない)、③コネクテッド・ワンストップ(複数の手続きをまとめて済ませる)の3つです。窓口改革の施策を並べるときに、この3つのどれに効いているのかで整理すると、庁内の議論がぶれにくくなります。

30分・無料・オンライン可の個別相談では、8項目のうち自団体で先に手をつけるのはどれか、という順番の相談も受けています。

重点8項目の前に置かれている「2つの土台」

計画の構成は、重点取組事項がいきなり来るわけではありません。その手前に2つの章があります。第5.0版で、この2章の順序を入れ替えて「総論から各論へ」の流れを明確にした、と改定概要に書かれています。

① 各自治体においてDXを進める前提となる考え方(3つ)

  • BPRの取組の徹底
  • 自治体におけるシステム整備の考え方
  • オープンデータの推進・官民データ活用の推進

② 自治体におけるDXの推進体制の構築(4つ)

  • 組織体制の整備
  • デジタル人材の確保・育成
  • 計画的な取組
  • 都道府県と市町村の連携による推進体制の構築

順番に意味があります。先に業務そのものを見直し(BPR)、体制を作ってから、8つの取組に入るという構成です。この順番を飛ばして重点8項目のツール導入から始めると、どこで止まるかは大体決まっています(→ 自治体DXが進まない理由で扱います)。

なお、デジタル人材の確保・育成については計画に具体的な年次が入っています。方針を策定していない自治体は、令和9年度までに策定の上で取組を進めることが求められる、という書き方です。ここは期限が明示されている数少ない箇所なので、押さえておく価値があります。

計画とセットで使う手順書・事例集

自治体DX推進計画とセットで使う手順書が並ぶ書棚

計画本体は「何に取り組むか」を示すもので、「どうやるか」は別の文書に分かれています。第5.1版の改定概要に整理されているものを挙げます。

文書版・時点中身
自治体DX全体手順書2026年1月改定DX推進の一連の手順をステップ0〜3で整理
自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書2024年9月改定標準化の意義・効果と作業手順
自治体フロントヤード改革推進手順書2025年5月策定モデルプロジェクト採択団体の取組をもとに、改革の各段階でやることと留意点
自治体DX推進参考事例集2025年6月改定(総務省サイトでは2026年7月にさらに改定)全国の事例を「体制整備/人材確保・育成/内部DX/共同調達」で整理

全体手順書のステップは次の4段です。

  • ステップ0:認識共有・機運醸成
  • ステップ1:全体方針の決定
  • ステップ2:推進体制の整備
  • ステップ3:DXの取組みの実行

ステップ0が「認識共有・機運醸成」から始まっているのは、読み飛ばされがちですが重要です。国の手順書自体が、いきなりツールを入れる前に庁内で話を合わせろ、と言っています。

なお、参考事例集は2026年7月にも改定されており、CAIO・CAIO補佐官の設置などの体制整備、オンライン申請によるデジタル完結手続、問い合わせ対応に係る生成AIの活用、都道府県域を越えた共同調達に関するページが追加されています(総務省サイトの記載による)。CAIO(AI分野の最高責任者)という役職名が国の文書に出てくるようになったのは、比較的新しい動きです。

版が変わったとき、自団体の方針はどこまで直すのか

年に1〜2回改定されるものを毎回追いかけていたら、それだけで担当者の時間が消えます。実務的には、次の3段階で見るのが現実的です。

1. 毎回見るもの=改定概要(PDF数枚)<br>本体は70ページ超ありますが、改定概要は数ページです。何が変わったかだけを確認します。

2. 年に1回見るもの=別紙2(主な取組スケジュール)<br>計画期間がなくなった代わりに毎年度更新される部分です。自団体の工程表と突き合わせるのはここだけで足ります。

3. 自団体の方針を直すのは、次のどれかに当たったときだけ

  • 重点取組事項の項目そのものが増減した(第5.0版の③独立、④追加のような変化)
  • 自団体が方針に書いている目標年次と、国のスケジュールがズレた
  • 法律で義務づけられた取組(標準化など)の期限や範囲が変わった

逆に、「文言の時点更新」「掲載データの最新化」だけの改定(第5.1版はこれに該当します)で自団体の方針を改訂する必要はありません。第5.1版の改定理由は、令和7年度補正予算の成立、令和8年度予算案、「地方創生に関する総合戦略」および「人工知能基本計画」の閣議決定などを踏まえた記載の更新、と改定概要に書かれています。

よくある質問

Q. 自治体DX推進計画は、いつまでに何をやれば「達成」になりますか。<br>達成の判定基準は計画には書かれていません。第5.0版で計画期間そのものが撤廃されているためです。年次目標が明示されているのは個別の取組(標準化、デジタル人材の確保・育成に係る方針の令和9年度までの策定など)で、計画全体としてのゴール日は設定されていません。

Q. 自団体でDX推進計画(方針)を作る義務はありますか。<br>計画本体は地方自治法上の技術的助言なので、自団体の方針策定そのものが法的義務ということではありません。ただし「3. 推進体制の構築」に「計画的な取組」が挙げられており、全体方針を策定することが求められる内容になっています。実際、令和6年度時点で全体方針を策定している自治体は全体の61.2%です(総務省「自治体DX・情報化推進概要(令和6年度)」)。

Q. 第4.0版をもとに作った自団体の方針は、作り直しですか。<br>全面的な作り直しは通常不要です。確認すべきは、①重点取組事項の項目立て(6項目のままになっていないか)、②計画期間の記載(「令和7年度末まで」で止まっていないか)、③eL-QRと共通化の扱い、の3点です。

Q. どこで原典を確認できますか。<br>総務省の「自治体DXの推進」ページ( https://www.soumu.go.jp/denshijiti/index_00001.html )に、計画本体・見消し版・改定概要・手順書・参考事例集がすべてPDFで置かれています。過去版も同じページに残っているので、自団体の方針が何版ベースかを確認するときにも使えます。団体ごとの取組状況は、デジタル庁の「自治体DXの取組に関するダッシュボード」で見られます。

まとめ|まずやることは「自団体の方針が何版ベースか」を確認すること

  • 最新は第5.1版(2026年1月30日改定)。重点取組事項は8項目で、計画期間は設定されていない
  • 計画は地方自治法上の技術的助言。ただし標準化のように別法で義務づけられた取組も同じ計画の中に並んでいる
  • eL-QRを使った公金収納は2026年9月以降に各団体で開始。ここに触れていない解説は版が古い
  • 追いかけるのは改定概要と別紙2の2つで足りる。自団体の方針を直すのは、項目の増減・年次のズレ・義務の変化があったときだけ

自団体の推進方針を開いて、重点取組事項が6項目のままになっていないか、計画期間が「令和7年度末まで」で止まっていないかを見るところから始めるのが、いちばん早い一歩です。

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