# 中小企業のDX支援は誰に頼むか|無料の公的窓口から外注・内製までの選び分け
「中小企業 DX支援」で検索すると、国の機関や都道府県のページが並びます。制度としては正しいものばかりです。ただ、読み終わってもたいてい迷いは消えません。知りたいのは制度の一覧ではなく、「うちは結局どこに相談すればいいのか」だからです。
この記事は、その1点だけを扱います。DXを進めたい中小企業から見て、頼み先は5種類あります。それぞれ何ができて何ができないのか、どういう順番で使うのが損をしないのかを整理しました。
なお、DXそのものの進め方(何から着手するか、5つのステップ)は中小企業のDXは何から始めるかが担当です。この記事は「進め方は分かったが、自社だけでは進まない」ところから始まります。
結論|頼み先は5つ。無料の公的窓口を使い切ってから、お金を出す先を決める
先に全体像です。
| # | 頼み先 | 費用の目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 1 | 公的な相談窓口(中小機構・よろず支援拠点・商工会議所・都道府県) | 無料 | 何から手を付けるか決まっていない。相場も分からない |
| 2 | 補助金・助成金 | 自己負担あり(後払い) | やることは決まった。お金の一部を制度で賄いたい |
| 3 | ITベンダー・システム会社 | 有料(作るものの規模による) | 作るもの・入れるものが決まっている |
| 4 | 外部人材(技術顧問・副業人材・フリーランス) | 有料(月額・時間単位が中心) | 社内に判断できる人がいない。決めるところから助けが要る |
| 5 | 自社でやる(内製) | 研修費・人件費 | 一度きりでなく、継続して回したい |
順番が大事です。1を使い切る前に3に行くと、比較の基準を持たないまま見積りを受け取ることになります。
そして最後に必ず5が要ります。外部に頼んだままでは、担当者が代わるたびに同じ費用が発生し続けるからです。
どこから手を付けるべきか整理したい場合は、30分・無料・オンライン可の個別相談をご利用ください。今の困りごとを3つ挙げていただければ、「公的窓口で足りる話」「外注が要る話」「自社で持つべき話」に仕分けするところまでご一緒します。
なぜ「DX支援」で検索しても答えが出ないのか
理由がはっきりしています。検索上位のページの多くは、支援を受ける側ではなく、支援する側に向けて書かれているからです。
代表例が経済産業省の「DX支援ガイダンス」です。経産省は2023年11月に「支援機関を通じた中堅・中小企業等のDX支援の在り方に関する検討会」を立ち上げ、全10回の議論を経てこのガイダンスをまとめました(経済産業省 DX支援ガイダンス)。内容は、支援機関がDX支援をするときに考慮すべきこと、支援機関同士の連携、支援人材の育て方です。
つまり、地域の金融機関・商工会議所・ITベンダーといった「支援する側」の教科書です。中小企業の経営者が読んでも「うちはどこに行けばいいのか」は書いてありません。良し悪しではなく、宛先が違います。
もうひとつ上位に並ぶのが、都道府県ごとのDX支援ページです。これは中小企業向けですが、自分の県のものでなければ使えません。だから全国向けの検索結果としては、いつまでも自分に当たらない情報が並び続けます。
裏を返すと、自分の県の窓口さえ見つけられれば、無料で使える支援がかなりあるということです。次で具体的に見ます。
頼み先1|無料の公的窓口|まずここを使い切る

いちばん見落とされている選択肢です。お金を出す前に、無料で相談できる先が全国と各県にあります。
全国どこからでも使えるもの
中小企業基盤整備機構(中小機構) が、デジタル化向けの窓口をいくつも持っています(中小機構 デジタル化をしたい)。
| 窓口 | 中身 |
|---|---|
| デジwith | 中小企業・小規模事業者向けのデジタル化ポータル。登録不要・無料で使えます(専門家への相談は事前申込が必要)。簡単な質問に答えると自社のデジタル化状況を同業他社と比べられる「同業他社比較マップ」、経営課題からITソリューションを提示する「IT戦略マップ」が作れます |
| IT経営サポートセンター | ITの利活用・導入について、気軽に相談できるオンライン面談 |
| 生産工程スマート化診断 | 製造の現場を対象にした診断 |
| 省力化ナビ | 省力化投資の検討向け |
よろず支援拠点(中小機構)も外せません。DX専門ではなく経営全般の相談窓口ですが、全国に拠点があり無料で相談できます(よろず支援拠点)。「そもそも何が問題なのか」の整理から入りたい場合はここが向いています。
地元の商工会議所・商工会も窓口です。会員なら相談は基本的に無料で、県の事業とつながっていることが多くあります。
都道府県が持っているもの
多くの県が、独自のDX支援制度と相談窓口を持っています。たとえば鹿児島県は「中小企業DX支援プラットフォーム事業」、大分県は「中小企業等のDX推進支援制度」の専用ページを設けています。
当社が事業の軸に置く島根県を例に挙げると、県の「しまねDX推進事業」は3本立てになっています(島根県 しまねDX推進事業)。
- セミナーの開催 — デジタル化・DXのセミナー、生成AIの基礎セミナーなど
- 伴走支援(専門家派遣) — デジタル導入支援者による伴走支援。県内の産学官金でコンソーシアムを組み、ITイノベーションセンター(ITOC)が伴走型支援を実施
- 補助金・助成金 — デジタル導入モデル支援助成金など
セミナー・伴走支援・お金の3点セットです。この形は他県でも珍しくありません。「うちの県には何もない」と思い込む前に、都道府県名+「DX 支援」で一度検索してみてください。
公的窓口でできること・できないこと
| できること | できないこと |
|---|---|
| 何から手を付けるかの整理 | 実際にシステムを作る・入れる |
| 補助金・助成金の情報と申請の相談 | 特定のベンダーを名指しで薦める |
| 専門家の派遣(回数に上限あり) | 毎週の伴走を長期間続ける |
| 相場感・他社の状況を知る | 自社の業務に合わせた作り込み |
「決める前」に強く、「作る」段では足りない。 これが公的窓口の性質です。だからこそ最初に使うのが得です。
頼み先2|補助金・助成金|「お金の出どころ」であって「やってくれる人」ではない
ここで一点だけ整理しておきます。補助金は頼み先ではありません。手を動かしてくれる人は別に必要です。
もうひとつ、混同されがちな区別があります。
- モノの補助金(ソフト・設備・システムの導入費)— 経済産業省・中小企業庁系、および都道府県独自のもの
- 人の助成金(従業員の訓練にかかる費用)— 厚生労働省系
このうち人の助成金は、訓練を始める前に手続きが要ります。研修を発注してから調べ始めると、順番の問題で使えません。制度の中身と申請の順序は中小企業のDXは何から始めるかの「お金の話」と、AI研修に使える助成金・補助金にまとめてあります。
支給の可否は受講する企業側の要件と労働局の審査で決まるため、「この制度が使えます」と言い切れるものではありません。実際に使うときは社会保険労務士か管轄の労働局にご確認ください。
頼み先3|ITベンダー・システム会社|作るものが決まっているときに強い

システムを作る・入れるのが仕事です。すでに要件が固まっているときに、いちばん確実で速い選択肢になります。
一方で、「何をすればいいか一緒に考えてほしい」という状態で持ち込むと、噛み合わないことがあります。要件が決まっていない段階の検討は、ベンダーにとっては見積りにも工数にも乗せにくい部分だからです。結果として、先方が扱いやすい形の提案(自社製品の導入)に寄ります。それが悪いわけではありませんが、比較の基準を持たないまま受け取ると判断ができません。
だから順番として、1の公的窓口で相場と選択肢を掴んでから、3に行くのが損をしません。
依頼先の見極めを外部の目で一緒にやりたい場合は、30分・無料・オンライン可の個別相談で、いただいた提案書や見積りをそのまま拝見して「何が入っていて、何が入っていないか」を整理します。
頼み先4|外部人材|「決める人の隣」を埋める
近年いちばん現実的になったのがこれです。技術顧問・副業人材・フリーランスといった形で、週に数時間だけ外部の人に入ってもらう選択肢です。月額や時間単位の契約が中心で、システム開発を丸ごと発注するより始めやすい形になります。
向いているのは、次のような状態です。
- 何をやるかは薄っすら見えているが、決めきれる人が社内にいない
- ベンダーの提案が妥当かどうか判断できない
- 作るまでは要らないが、進め方を毎週見てくれる人がほしい
公的窓口の専門家派遣(回数に上限があることが多い)より継続的に見てもらえて、開発の全面外注より関わり方が軽い。ちょうどその中間を埋める選択肢です。
注意点は、当たり外れが人に依存することです。契約前に「毎週どういう形で関わるのか」「成果として何が残るのか」を具体的に決めてください。
頼み先5|自社でやる(内製)|最後に必ず必要になる

外部に頼んでも、最後は自社に残ります。理由は単純で、業務を知っているのは自社の人だけだからです。
とくに生成AIを使った業務改善は、外注に向きません。どの業務に、どこまで任せるかを決めるには、その業務を毎日やっている人の判断が要ります。この考え方は生成AIで業務を効率化する方法で3段階に整理しています。最初の1業務として取り組みやすいのは議事録で、手順とプロンプトは生成AIで議事録を作る方法にまとめました。
内製する側の人をどう育てるか(誰を選び、何ヶ月かかるか、内製・外部研修・採用のどれを選ぶか)はAI人材育成の進め方【中小企業向け】が担当です。研修を外部に頼む場合の費用の考え方はAI研修の費用にまとめています。
選び分けの早見表|今の自社の状態から引く
| 今の状態 | まず行く先 |
|---|---|
| DXで何ができるのか分かっていない | 1. 公的窓口(デジwith・よろず支援拠点・県の窓口) |
| やることは決まった。お金を抑えたい | 2. 補助金・助成金(人の制度は始める前に手続き) |
| 入れるシステムが具体的に決まっている | 3. ITベンダー |
| ベンダーの提案が妥当か判断できない | 4. 外部人材(→ そのうえで3へ) |
| 一度きりでなく、続けて回したい | 5. 内製(研修+担当者を決める) |
| 生成AIで日々の業務を軽くしたい | 5. 内製が中心(外注は向かない) |
依頼する前に必ず確認する5つ

3・4に進むときは、契約前に次の5つを確認してください。あとで一番もめるところです。
- 何をどこまでやるのか — 「DX支援」という言葉のままで契約しない。成果物を紙で書き出してもらう
- 費用の内訳 — 初期費用と月額を分けて出してもらう。月額の中身(保守なのか、伴走なのか)も分ける
- 作ったものは誰のものか — システムやデータの所有権、退会時にデータを持ち出せるか
- 社内に何が残るのか — 手順書、設定の説明、担当者への引き継ぎがあるか。ここが空欄だと、契約が切れた瞬間に元に戻ります
- やめるときの条件 — 最低契約期間、途中解約の扱い
とくに4です。DX支援でお金を払ったのに社内に何も残らないケースは、たいていここを確認していません。
「丸投げ」が失敗する構造
最後に、頼み先を選ぶ以前の話をします。
DX支援は代行ではなく伴走です。どの頼み先を選んでも、社内で決めなければならないことは残ります。
- どの業務を変えるのか(外部の人には、何が本当に困っているか分かりません)
- 現場の誰が最初に使うのか
- うまくいったかどうかを何で判断するのか
これらを外部に預けると、支援側は無難な提案しか出せません。逆に、この3つを持って相談に行けば、公的窓口でも外部人材でも、話が一気に具体的になります。
「何をお願いしたいか」を1枚にしてから相談に行く。 これだけで、無料の窓口から引き出せるものが変わります。
よくある質問
Q. 無料の公的窓口だけでDXは進みますか。<br>「何から始めるか」を決めるところまでは進みます。実際にシステムを作る段や、毎週の伴走が必要な段になると足りなくなります。ただし、無料の段階で方向を決めておくと、そのあとに払う金額が変わります。
Q. 相談する前に何を準備すればいいですか。<br>困っている業務を3つ書き出してください。「DXしたい」ではなく「毎月の請求書作成に3日かかっている」の粒度です。これがあるかないかで、同じ窓口でも受け取れるものが変わります。
Q. 支援会社の見積りが妥当か分かりません。<br>2社以上から取ってください。そのうえで、金額ではなく「作業の内訳」と「社内に何が残るか」を並べて比べます。金額だけを並べると、含まれる範囲が違うものを比べることになります。
Q. 補助金が採択されてから支援会社を探しても間に合いますか。<br>制度によります。補助金は事業計画を出す段階で、何にいくら使うかを書く必要があるものが多いため、実務上は先に相談先を決めておくほうが動きやすくなります。制度ごとの手続きは公募要領と管轄窓口で確認してください。
まとめ|今週やる2つ
- 「都道府県名+DX 支援」で検索して、自分の県の窓口を1つブックマークする(あわせて中小機構のデジwithを開く)
- 困っている業務を3つ、紙に書き出す
この2つを持って無料の窓口に行くところまでが、費用ゼロでできる範囲です。そこで方向が決まってから、外注するか、外部人材を入れるか、自社で育てるかを選べば、順番として損をしません。
当社は島根の中小企業の生産性を上げることを目的に立ち上がった会社で、AI導入の相談・開発・技術顧問と、業務に直結するAI研修を扱っています。「どこに頼むべきか」の段階で外部の目が要る場合は、そこからご相談いただいて構いません。
まずは30分、無料の個別相談で整理しませんか
30分・無料・オンライン可・売り込みなし。気になっている業務を3つ挙げていただき、その場で「AIに置き換わる/半分楽になる/向かない」に仕分けしてお持ち帰りいただきます。
テレビ・新聞で取り上げられました
