「AI研修を入れたいが、予算が通らない」。そこで助成金・補助金を調べ始めると、古い数字を載せたままの記事が多く、「使えるつもりで稟議を通したら対象外だった」という事故が起きやすい領域です。
この記事は2026年8月3日時点で厚生労働省・中小企業庁などの公式資料を直接確認した内容だけをまとめています。制度は年度の途中でも改定されるため、最後は必ず公的窓口でご確認ください。
結論:制度はある。ただし「研修を始める前」に動かないと1円も出ない
- 本命は厚生労働省の「人材開発支援助成金」。研修費用と受講中の賃金の一部が戻る制度で、中小企業なら研修費の最大75%が助成対象になる枠があります。
- 補助金側(デジタル化・AI導入補助金2026)は、研修だけでは使えません。登録されたソフトウェアの導入とセットの「導入研修」に限られます。
- 最大の落とし穴は申請のタイミング。人材開発支援助成金は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に計画届を出す必要があり、研修が始まってからでは原則として対象外です。
「良い研修を見つけた → 申し込んだ → あとで助成金を申請しよう」という順番は、その時点で失格になり得ます。
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テレビ・新聞で取り上げられました
※ 当社は助成金の申請代行や社会保険労務士の業務は行っていません。お話しできるのは研修の中身と費用感までです。
助成金と補助金は別物|まずここを取り違えない
| 助成金(人材開発支援助成金など) | 補助金(デジタル化・AI導入補助金など) | |
|---|---|---|
| 主な所管 | 厚生労働省 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 採択の考え方 | 要件を満たせば支給(予算の範囲内) | 公募に応募し、審査を経て採択 |
| 受付時期 | 通年(コースにより時限措置あり) | 公募回ごとに締切がある |
| 研修費用の扱い | 訓練経費そのものが対象 | ソフト導入に付随する研修のみ対象 |
両方に手を出す前に押さえておきたい点がひとつ。人材開発支援助成金のパンフレットには「同一の経費、賃金、訓練実施を対象として他の助成金や補助金等を申請する場合、どちらか一方しか支給されない場合があります(併給調整)」と明記されています。同じ研修費用での二重取りはできない、と考えてください。
本命は「人材開発支援助成金」|AI研修に関係する2つのコース

社員に職務に関連した訓練を計画に沿って受けさせた場合、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。2026年8月時点で7コースありますが、AI研修に関係するのは主に次の2つです。
| 事業展開等リスキリング支援コース | 人材育成支援コース | |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 75%(60%) | 45%(30%)※加算あり |
| 賃金助成(1人1時間) | 1,000円(500円) | 800円(400円)※加算あり |
| 経費助成の限度額 (1人1訓練・10〜100時間未満) | 30万円(20万円) | 15万円(10万円) |
| 訓練内容の縛り | 事業展開・デジタル/DX化・職務転換のいずれかに該当が必要 | 職務に直接関連する訓練であること |
| 期限 | 令和8年度末までの時限措置 | 記載なし |
事業展開等リスキリング支援コース|助成率は高いが2027年3月末まで
助成対象になるのは、①事業展開、②企業内のデジタル・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化、③人事および人材育成に関する計画にもとづく職務転換――のいずれかに当てはまる訓練です。AI活用の研修は②に関連づけて申請されることが多い枠です。1事業所が1年度に受給できる上限は1億円とされています。
ただしこのコースは期間限定です。パンフレットには「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設」「令和8年度末までの時限措置」と記載されており、2027年3月末で終了する予定。いま検討している会社にとっては最後の年度にあたります。
人材育成支援コース|事業展開と結びつけにくい場合の標準枠
正社員などの場合は経費助成45%(大企業30%)。有期契約労働者などの場合は70%です。さらに賃金要件・資格等手当要件を満たすと+15%が加算されます。要件は、訓練修了後に受講者の賃金が5%以上上昇していること、または資格等手当を就業規則等に定めて支給し3%以上上昇していること。研修とセットで処遇を見直す会社向けの加算です。
助成率の違いで実質負担はどう変わるか|1人あたりの上限額に要注意
助成率だけを見ると計算を間違えます。経費助成には1人1訓練あたりの限度額があり、研修費用が高いほど「率」ではなく「上限」で頭打ちになるからです。
Yukarimiの研修は3コースとも1コース12時間で、制度上は「実訓練時間数10時間以上100時間未満」の区分にあたる時間数です。この前提で、助成率と限度額を機械的に当てはめると次のようになります。
| 研修費用 | リスキリング支援コース(75%・上限30万円) | 人材育成支援コース(45%・上限15万円) |
|---|---|---|
| 32万円 | 助成24万円 → 実質8万円 | 助成14.4万円 → 実質17.6万円 |
| 40万円 | 助成30万円(上限) → 実質10万円 | 助成15万円(上限) → 実質25万円 |
| 48万円 | 助成30万円(上限) → 実質18万円 | 助成15万円(上限) → 実質33万円 |
ポイントは、40万円を超えたあたりから助成額が上限に張り付き、そこから先の値上がりはそのまま自社負担になること。「率が75%だから4分の1で受けられる」と単純計算した稟議書は、ここでズレます。なお経費助成とは別に、所定労働時間内に受講した時間には賃金助成が付きます(中小企業がリスキリング支援コースを使う場合、12時間×1,000円=1人あたり1万2,000円が目安)。
この表は公表されている助成率と限度額を自社価格に当てはめた計算にすぎません。実際に対象になるかは労働局が判断します。この記事では「対象になる」とは断定しません。費用そのものの内訳や相場観はAI研修の費用相場と実額|1人あたりで比べる見積りの読み方に、研修そのものの内容・形式・会社の選び方は法人向けAI研修とは?内容・形式・費用と会社の選び方にまとめています。
稟議を通す前に確認したい5つの落とし穴

① 申請は研修開始前。訓練開始日の6か月前〜1か月前が提出期間
職業訓練実施計画届の提出期間は「訓練開始日の6か月前から1か月前までの間」。パンフレットには、支給されない例として「訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間に提出していない場合」が明記されています。「来月から始めたい」という段階では、すでに間に合いません。
② 計画届を出す日までに、社内の準備が終わっていること
前提として職業能力開発推進者の選任(研修や人事の担当課長など)と、事業内職業能力開発計画の策定・社員への周知が必要で、いずれも計画届の提出日までに済ませます。あわせて、申請する会社が雇用保険適用事業所であること、受講者がその事業所の雇用保険被保険者であることも要件です。役員だけ、業務委託の方だけを受講させる形では要件を満たしません。
③ 訓練時間は10時間以上。ただし数えない時間がある
要件は実訓練時間数が10時間以上。この時間数からは、食事を伴う休憩時間と移動時間が除かれ、小休止は1日あたり累計60分まで、開講式・閉講式やオリエンテーションは1回の計画届あたり累計60分までしか算入できません。休憩や事務連絡を差し引いた実質の講義時間で判断されます。
Yukarimiの3コースはいずれも12時間で設計しています(回数の分け方は調整可能)。時間数の線だけを見れば10時間は超える計算になりますが、それをもって対象になると判断できるわけではありません。
④ 内容によっては対象外。2026年8月3日から厳しくなった項目がある
パンフレットには「助成対象とならない実施目的のもの」が一覧で示されています。AI研修で引っかかりやすいのは次のあたりです。
- 自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明/コンサルタントによる経営改善の指導(=通常の事業活動として行われるもの)
- 接遇・マナー講習など、職種を問わず社会人として共通して必要となるもの
- 意識改革研修・モラール向上研修など、職務の知識・技能の習得を目的としていないもの
- 専らビデオのみを視聴して行う講座(eラーニング・通信制を除く)
- 管理職研修・マネジメント研修・リーダーシップ研修(事業展開等リスキリング支援コースのうち、人事および人材育成に関する計画にもとづく訓練に限る)
さらに事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に提出する計画届から、「職務に直接関連しない訓練」と「職種を問わず共通して必要なもの」はデジタル・DX化に関する訓練であっても対象外と明記されました。「AIの話だからデジタル関連で通るだろう」という読みは、以前より通りにくくなっています。
既存のアプリやシステムを購入して操作方法を習得するだけの内容も対象外とされています。「特定ツールの使い方講座」ではなく、社員の職務に直結する専門的な知識・技能として設計されているかが分かれ目です。カリキュラムを労働局に見せて相談するのが確実です。
⑤ 研修費用は会社が全額負担。値引き・返金があると不支給
- 社員に訓練経費を一部でも負担させている場合は、賃金助成も含めて不支給
- 会社が実質的な減額となる金銭の支払い(訓練経費の返金を含む)を受けた場合、経費助成の対象外
- 同じ内容なのに助成金を申請する場合だけ受講料が著しく高い場合、その差額は算定経費としない場合がある
厚生労働省自身が、「助成金を活用して従業員に訓練を実質無料で受けさせることができるなどと謳い、本来受けることができない助成金・訓練の提案・勧誘を行う訓練機関やコンサルティング会社などが存在している」と注意喚起しています。「実質無料」「助成金で全額まかなえます」と言い切る営業を受けたら、一度立ち止まったほうがよい、というのが公式の立場です。
申請の流れと期限|計画届から支給決定まで
- 事前準備:推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定・周知、研修会社からカリキュラムと見積の入手
- 職業訓練実施計画届の提出:訓練開始日の6か月前〜1か月前に、事業所を管轄する労働局へ(本社が支社の分をまとめる形も可)
- 訓練の実施:計画どおりに実施。変更があれば変更届。費用は支給申請までに支払いを終えていること
- 支給申請:訓練終了日の翌日から起算して2か月以内
- 審査・支給決定
社内説明で強調すべき点が2つあります。ひとつは「計画届を提出したことをもって、助成金が確実に支給されるものではありません」とパンフレットに明記されていること。もうひとつは、令和7年度以降は審査が支給申請後に一括して行われるため、結果が分かるのは研修終了後になることです。研修費用はいったん全額を自社で支払い、あとから助成金が入る順番になるので、「助成金が出るから今期の予算内で収まる」という組み立ては入金時期を確認したうえで行ってください。
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※ 助成金の申請代行・社会保険労務士業務は行っておりません。制度の適用可否は労働局へお問い合わせください。
補助金側:デジタル化・AI導入補助金2026は「研修だけ」では使えない

もうひとつ名前が挙がるのが旧「IT導入補助金」です。2026年度から「デジタル化・AI導入補助金2026」に名称が変わりました。まだ旧名称のまま解説している記事が多いので、社内資料をつくるときはご注意ください。通常枠の公募要領で確認できる条件は次のとおりです。
- 補助率:1/2以内(一定の賃金水準の条件を満たす場合は2/3以内)/補助額:5万円〜450万円以下
- 補助対象経費はソフトウェア購入費と導入関連費。研修に関わるのは役務の「カテゴリー6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)」
- ただし役務は登録されたソフトウェアと対になっている場合に限り申請可能。役務全体の補助対象経費は200万円が上限
- 申請には登録済みの「IT導入支援事業者」とのパートナーシップと、GビズIDプライムアカウントが必要
要するに、ソフトウェア導入を伴わないAI研修だけを対象に申請することはできません。「AI導入補助金という名前だから研修にも使えるだろう」という期待は、ここで外れます。
時系列の縛りも助成金と同様です。公募要領には「交付決定前に契約、発注、納品、支払い等を行った場合は、補助金を受けることができない」と明記されています。また消費税は補助対象外(人材開発支援助成金では消費税は対象経費に含まれます)。この違いは見積書を読むときに効いてきます。
そのほかに検討できる制度|業務改善助成金と自治体の独自制度
業務改善助成金(厚生労働省)は、事業場内でもっとも低い賃金を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った場合に費用の一部(最大600万円)が助成される制度です。令和8年度の申請期間は令和8年9月1日から。ただしパンフレットに示された対象経費の例は「機器・設備の導入」「経営コンサルティング」「その他」で、研修そのものは例示されていません。賃金引き上げが必須条件でもあり、AI研修の費用を賄う目的で最初に検討する制度ではありません。
自治体の独自制度もあります。たとえば島根県の「在職者リスキリング支援事業」は、県内に事業所を有する中小企業者を対象に、オンライン学習サービスのライセンス費用の1/2を県が負担する形です(受講者負担は新規利用企業で8,800円/ライセンス、先着50ライセンス)。自治体の制度は年度ごとに内容も枠数も入れ替わり、先着順で締め切られるものも多いため、所在地の自治体の産業振興・雇用担当窓口や商工会議所・商工会に直接聞くのが早道です。
「使えるつもりだった」を防ぐ確認の順番

- 自社が中小企業事業主にあたるか(下表)。ここで助成率が大きく変わります
- 雇用保険適用事業所か、受講予定者が雇用保険被保険者か
- 研修の開始希望日から逆算する。1か月を切っているなら、その日程では申請できない前提で組み直す
- カリキュラムを取り寄せ、対象外の項目に当たっていないかを確認する
- 管轄の労働局に事前相談する。ここで初めて「使える見込み」の話ができます
| 主たる事業 | A 資本金の額または出資の総額 | B 企業全体で常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
資本金や出資金を持たない事業主(個人事業主、一般社団法人、医療法人、学校法人、社会福祉法人など)は、Bの労働者数だけで判定されます。
よくある質問
Q. 受講するのが1人だけでも申請できますか
公式パンフレットに「最低何人から」という人数要件の記載はありません。書かれているのは、対象者が雇用保険被保険者であること、実訓練時間数が10時間以上であることなどです。一方で受講回数の制限があり、助成対象となる訓練の受講は1人につき1年度3回までとされています。
Q. オンライン研修でも対象になりますか
実施方法で扱いが変わります。動画を各自が視聴するタイプのeラーニングや通信制は賃金助成の対象外で、経費助成の限度額も下がります。さらに事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日以降に提出した計画届にもとづくeラーニングの訓練は1人につき1年度1回までという制限が加わりました。講義中に質疑応答ができる「同時双方向型の通信訓練」は、これらとは別の区分として扱われます。
Q. 申請の手続きは誰がやるのですか
申請するのは事業主(研修を受けさせる会社)で、提出先は事業所を管轄する都道府県労働局です。社会保険労務士に依頼する会社もあります。Yukarimiは助成金の申請代行・社労士業務を行っていません。お手伝いできるのは研修そのものの設計と実施までです。
まとめ|制度は変わる。最後は必ず公的窓口で確認を
- AI研修の費用に直接使える可能性が高いのは人材開発支援助成金。中小企業なら事業展開等リスキリング支援コースで経費の75%、人材育成支援コースで45%(加算あり)
- ただし1人あたりの経費助成には限度額があり、研修費用が上がるほど「率」ではなく「上限」で頭打ちになる
- 計画届は訓練開始日の6か月前〜1か月前。研修が始まってからでは間に合わない
- 操作説明・マナー研修・意識改革研修などは対象外。2026年8月3日以降はデジタル関連であっても職務に直接関連しない訓練は対象外と明記された
- デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)はソフト導入とセットの導入研修に限られる
- 事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置と記載されている
この記事の内容は2026年8月3日時点で確認した公式資料にもとづくものです。助成金・補助金は年度の途中でも改定されます(実際、人材開発支援助成金は2026年8月3日提出分から対象外の範囲が変わりました)。申請の際は必ず管轄の都道府県労働局・ハローワーク、および各制度の事務局で最新の要件をご確認ください。
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※ 助成金・補助金の申請代行、社会保険労務士業務は行っておりません。制度の適用可否については労働局・各制度の事務局にお問い合わせください。
参考にした一次情報
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」各コースの詳細版パンフレット(令和8年8月3日以降に提出された職業訓練実施計画届に基づく訓練が対象の版)/2026年8月3日確認
- 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」/2026年8月3日確認
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」/2026年8月3日確認
- 島根県「デジタル人材育成支援事業(在職者リスキリング支援事業)」/2026年8月3日確認
